国語のクラス偏差値が半年で13上がった方法を公開します。
都内の中学受験塾の新学年は2月に始まる。
それは東京都内の入試が2月1日に始まるから。
1年後に入試を迎えるそのクラス。
12名の男女がいるそのクラスにはただただのんびりとした時間が漂っていた。
「ねえ、みんな。どうせやるならできるようになろうよ」
「は〜い!」と言葉だけは威勢がいい。
そう、その言葉には全く責任がないから。
ここで12人の戦士達を簡単に紹介したいと思う。
1)宿題をまったくやってこない、本当は賢いK。偏差値40程度。
2)とにかく真面目、言われたことは必ずやってくるN。偏差値50程度。
3)口だけは達者。でも結局は適当にごまかしてしまうS。偏差値50程度。
4)やたら冷静に状況を見つめるおませなH。偏差値40程度。
5)2月に受験勉強を始めて常に苦しみ続けているO。偏差値30程度。
6)実は家庭環境が複雑でなかなか悩み深い少年I。偏差値45程度。
7)おぼっちゃまくんみたいな少年O。偏差値40程度。
8)努力家、字からも真面目な性格があふれ出すOH。偏差値40程度。
9)クラスで一番背が高い少年、ちょっと言葉が遅いM。偏差値30程度。
10)落ち着いて周りを見ているTさん。偏差値40程度。
11)2月から塾に入ったばかりなのにやたら賢いS。偏差値45程度。
12)ひょうひょうとやりこなす運動神経抜群のE。偏差値50程度。
この個性豊かな少年少女たちが、クラス分けされている塾ではあり得ないことを半年後にやってのけたのである。
大学を出たばかりの素人教師と12名の戦士達とが共に戦った結果。
クラス平均偏差値42から55へのアップ。
3クラス中の3番目のクラスの生徒達の成績としては「奇跡」と言えるのかもしれない。
でも、それは再現可能なものだった。
小説風に書こうとしてしまいました。
ここからは、ちょっと変えます。
このクラスで起きたことをできるだけ簡潔にお伝えし、皆さんのお役に立つことができればと思います。
素人教師だからなかったものが一つ。
慢心。
素人教師でありながら持っていたものもが一つ。
自分自身と生徒の可能性を信じる気持ち。
当時の私がしていたこと。
①とにかく予習。
文章をノートに写して、すべての表現の意図を考えようとしていました。それから、教える内容の優先順位を決めて、私の読みとった答えを生徒自身に気づかせるためのシナリオを考えました。
②大学入試の参考書を読みまくる。
当時は中学入試・高校入試用のよい問題集参考書はなかったので、大学入試の参考書をとにかく読みまくりました。本屋にある参考書で私が見ていないものは一つもない状態でした。買った参考書も10冊近くにはなっていたはずです。
③中学入試の問題を解きまくる。
灘・麻布の問題と生徒が受ける学校を1日1年分は解いていました。
④生徒の答案を見る。
授業でやった問題の生徒の解答を家で見ていました。
その生徒がどう考えてその答えを書いたのか。
そこにある空欄の意味などを考えたりしていました。
選択肢問題にあるクラスの傾向が見えてきて、自分の教え方の不十分さに気づくこともありました。
教師としてのスキルアップと、その生徒が伸びていくのに必要なことを考えること。
この2点に日々取り組んでいたということです。
では、そろそろ「たった一つのこと」についてお話します。
その前に私の授業の流れについてふれておきます。
①漢字・知識テスト
②漢字・知識テスト解説
「危険」という字のときには、「危」の訓読み二つと「危」を使う他の熟語「危機」「危急」「危害」をやり「危急」のところでは「危急存亡」も確認。さらに、「険」の訓読み、「冒険」「保険」「険悪」「険路」「陰険」を教える。さらには時間的な問題もありますが「検」「剣」「倹」までやることもありました。
③文章題を解く
④一文一文丁寧に読み合わせ
そこから何が読みとれるかを本当に丁寧に確認していきました。
⑤設問の考え方・答え合わせ
当時はここにあまり力をいれていませんでした。文章を読み切れば答えは出せるという感じでやっていました。今はここも相当に力を入れて教えます。というより、ここがすべてと言ってもよいかもしれません。この設問での読解力が本文の読解力につながるというように考えているということです。
宿題
①漢字・知識の勉強
②文章題の復習
こういう授業をやっていたのですが、そう簡単に成績は上がりませんでした。
そこで、4月の終わりにたった一つの約束を生徒と決めました。
この授業の流れに一つだけ加えたのです。
【目標】2組を抜く! 期限は8月のテスト。
【約束】授業でやったことの確認テストで満点をとる。
【確認テストの内容】
授業中に教えた漢字の確認。
授業でやった文章題と全く同じ問題のテスト。
ただし、選択肢はなくし記述の問題とする。
本当に夢中になって取り組みました。
授業前は生徒たち自身が確認しあっていました。
まさにチーム一丸となってがんばっている感じです。
こうなってからは授業の集中も増し、よい循環が始まりました。
共通の敵を作り、生徒の主体性を喚起しつつ、毎回の授業に目標を持たせたのです。
その上で、毎回新たに解く問題の間違え方の点検は私が徹底して行いました。
結局、11と12の子が2組に上がり、迎えた8月。
3組は55で終わり2組は56。
残念ながら抜くことはできませんでした。
しかし、11と12の子を加えた12名のクラスとして見ると2組を抜くことができていたのです。
この子たちが教えてくれたことが私の原点です。
そして、この子たちが受験の時に流した涙こそ私を支え続けてくれているものです。
国語の成績は上がります。
やることはたった一つ。
目の前の問題を1週間後もできるようにする。
結局、本当に単純なことでした。
だからこそ、特別なスキルも必要なく誰にでも再現可能なのです。
そして、それはどの教科でもできることです。
ともにがんばりましょう。応援しています。