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2020年度 渋谷幕張中1次試験 国語解説(その2)

2020年度 渋谷幕張中1次試験 国語解説(その1)

https://blog.hatena.ne.jp/tanoshiijuken/tanoshiijuken.hatenablog.com/edit?entry=26006613627199372

 3)大問1の解説

問五 具体例の説明 得意は正解、苦手も不正解でもOK

 「例についての説明として最も適当なもの」を問われています。例はわかりやすくするために書かれるものなので、何をわかりやすく伝えようとしているかを二つの視点で考えます。

1)文脈

文脈を追いかけることで、筆者がわかりやすくしようとしたものをつかみます。

2)具体例の抽象化

具体例を抽象化することで、筆者の伝えようとしたことをとらえます。

 

 まずは文脈から考えます。(中略)のあとをご覧ください。以下のような流れになっています。

・「空気」はどのように醸成されるか、という疑問の提示。

・「臨在感的把握」から生まれる、という答えが難しいのでどういうことか見るという話。

・「臨在感的把握」の具体例として、イスラエルでの発掘調査の話の紹介。

・例が終わったあとで、何でもない物や何でもない言葉に、何らかの力を持った霊のごときものが臨在しているように把握されることを「臨在感的把握」だというまとめ。

 

 まとめます。

 イスラエルでの発掘調査は、「臨在感的把握」をわかりやすくするためのものであり、「臨在館的」把握とは何でもないものに何らかの力が臨在しているかのように把握されることである。そして、それが「空気」が生まれるもとである。

 

 次に、例の抽象化を行います。

 イスラエルでの発掘調査には以下のことが書かれてあります。

・日本人は1週間ほどで病人のようになった。

 →人骨や髑髏からまがまがしいものの臨在を感じた。

ユダヤ人は元気なまま。

 →一神教なので骨はただの「もの」にすぎない。

 

 まとめます。

 日本人は人骨や髑髏をただの「もの」ととらえるのではなく、そこにまがまがしいものの臨在を感じたことで、病人のようになった。

 

 これら2点を意識して選択肢を見ます。正解はオになります。

オ 何でもないものに特別な力を感じるということが「空気」の発生する原因であり、その具体例として、日本人が人骨や髑髏に祟りのようなものを感じるということを説明している。

 

 いかがでしょうか。こう考えるとオが正解であることは容易にわかるはずです。この問いを確実にとれるようになれば、国語は安定するはずです。

 

問六 同内容の記述問題。得意、苦手ともに△はとりましょう。

 この問いは「本文全体をふまえて説明しなさい」という条件がついているので、本文の内容をふりかえってみましょう。

①「空気」は議論や主張を超えて意志決定を行う力がある(編集部の話や戦艦大和の出撃を例とする)。

→問四で出題されている。

②「空気」は何でもないものに特別な力を感じる臨在感的把握から生まれる(イスラエルでの発掘調査を例とする)。

→問五で出題されている。

絶対の神を持たないために、絶対化される対象はあらゆるところにあり、「空気」に支配されることになる。

③「空気」の特徴二つ。

・「空気」ができると絶対的に拘束される(西南戦争の新聞報道を例とする)。

※「もう一つ」という関係を示す言葉をおさえることが重要。

・対立概念で対象を把握することを排除する=相対的な見方を排除する。

一神教の世界との対比。

一神教の世界=絶対的なものは神だけ→物事を対立概念で把握することを可能にし「空気」を相対化する。

・日本→二重性を認めない=「空気」を絶対化する

   →物事を対立概念で見ることがない→「空気」に支配される

 

①〜④を箇条書きにします。

①「空気」は議論や主張を超えて意志決定を行う力がある。

②「空気」は何でもないものに特別な力を感じる臨在感的把握から生まれる。

③「空気」ができると絶対的に拘束される

 「空気」は相対的な見方を排除する。

④日本は、一神教の世界とは違い物事を対立概念で把握することがないために「空気」を絶対化する。

 

①〜④をまとめれば答えができあがります。最後の部分は本文にない言葉ですが、「支配」に当たる内容にしています。

 

日本では、一神教の世界とは違い物事を対立概念で把握することがないために、何でもないものに特別な力を感じる臨在感的把握から生まれる「空気」を絶対化するので、議論や主張を超えて人がそれに従わざるを得なくなるということ。

 

 問四、問五と解かせながら、問六で本文全体のまとめを行わせるのは、まるで東大の入試問題のようですね。

 こういう問いの場合は、問四や問五の答えを使ってまとめると時間短縮にもなるので、それを意識した答えにしています。

 

 国語が苦手な生徒が△をとるための考え方も記しておきます。

 「空気」の支配が傍線で、設問で「どういうこと」か聞かれているので、「空気」が支配すること、という内容を答えればよいことに気づきます。

 次に、「空気」が何を支配するのだろう? と考えます。このように、傍線の内部になる不足している情報を考えるようにするのです。

 そして、傍線の前後から、「空気」は二重性を認めないことと、物事を対立概念で見れば「空気」に支配されない、ということを読み取ります。二重性を認めないというのは絶対化するということまではつかみましょう。

 これらをまとめます。これで点にはなるはずです。

物事を対立概念で見ないために絶対化された「空気」が日本人の意志決定を制限しているということ。

 

問七 本文の内容把握。得意は正解、苦手は△。

アは選べるはず。

イには論理的は判断があったと書かれているので、空気と矛盾します。これは容易に外せます。

ウの「実際には正義の軍」というのは本文には書かれていません。後半部が見事に書かれてありますが、最初に違和感を覚えることができるので、これも間違える人は少ないでしょう。

エは「臨在感的に把握する空気が生じた」という表現に迷う生徒が出るはずです。本文では「空気」は「臨在感的把握」から生まれると書かれているので、「空気」はすべて「臨在感的に把握する」ものでよいのです。西郷のところには「臨在感的に把握」と書かれていたのでとまどいはなかったはずですが、戦艦大和のところで迷ったことと思います。

オの文は、「もともと」「絶対視していたから」「絶対的命題に疑いを持たなかった」とあるが、本文では相対的に見ることができると思っていなかったために絶対的命題に疑いを持たなかったという文脈になっています。また、「忠君愛国」のようにもともと絶対視されていたものもなくなったりしていることからもわかります。