「国語を得意に!」〜中学入試応援ブログ〜

中学入試の国語を得意にすること、合格方法についてはお任せください。

開成中の国語(2020年度入試解説をゆっくりやっていきます)

2020年度開成中解説

 

〈先生〉

それでは、開成中の解説を行います。

この年は、合格者平均点が51.5点(60.6%)、受験者平均点が42.3点(49.8%)でした。

合格者平均点と受験者平均点との差が9.2点、算数の差が10.9点なので、国語でもかなりの差がつくと思っていいですね。

国語の得意な生徒にとっては有利な学校です。

この年は、算数理科社会が受験者平均でも国語で合格者平均プラス5点とれば合格できます。

そう考えるとなんとかなりそうな気がしますよね。

では、1問ずつ丁寧に見ていきましょう。

〈生徒〉

先生、よろしくお願いします。

算数が苦手なので不安でしたが、なんとかなるような気がしてきました。

国語は比較的得意ですが、しっかりと磨きをかけたいと思います。

〈先生〉

はい。

では一番の問一です。

 

問一 傍線1「同じ班になった『ひなちゃん』という子と仲良くなった」とありますが、めぐ美は、ひなっちと出会ったことで、どのように変わりましたか、説明しなさい。

 

これは変化を問われたもので、丁寧にたどれば確実に点をとれる問題です。

〈生徒〉

確かに、これは比較的易しく感じました。

変化を問われた問題は何度かやったことがあります。

変化の前、変化のきっかけ、変化の後とを整理して答えればいいんですよね。

〈先生〉

さすがだね。しっかりと勉強しているが伝わってきます。答えの型は、まさにその通りです。

①変化前

②きっかけ

③変化後

この3点を書けばいいんですね。ただし、今回の場合は設問で「ひなっちと出会ったことで」でと変化のきっかけは示されているので、②を書く必要はありません。

では、あなたの答えを教えてもらえますか。

〈生徒〉

答え

未知の世界が広がる本を読むのが好きな内気な子だったが、ひなっちの影響で活発になり友達も増え自信が持てるようになった。

〈先生〉

ちゃんと的を射ていますね。自分なりの工夫も見られるし素晴らしい答えです。

どんなふうに考えたか教えてもらえますか?

〈生徒〉

はい。まず、設問で「ひなっちと出会った」前と後での「めぐ美」の変化を意識して本文を確認しました。

まず変化前のポイントとして、以下の点を押さえました。

・「本が愉しかった頃のことを思い出した。せいぜい小学校の低学年くらいのことだった」

・「膝の上でそっと開くと知らない世界が広がった」

・「低学年の頃の自分は、大人数でわあっと盛り上がるノリには気後れした」

最初の2点からは、本が好きだということがわかります。

そして最後の1点からは、内気な子ということがわかりました。

これをつなげると、「本を読むのが好きな内気な子」となりますが、わざわざ「知らない世界が広がった」と本が好きな理由も書かれているので、それも触れた方がいいと思って、答えの前半を次のようにしました。

「未知の世界が広がる本を読むのが好きな内気な子だったが」

〈先生〉

「未知の世界が広がる」という表現を入れたのは見事ですね。「内気な子」のレベルは開成受験者であれば5年生でも書ける言葉ですからね。本を読む理由も入れてきたのはとってもいいですね。

では、後半をお願いします。

〈生徒〉

はい。次に変化後のポイントを以下のとおり考えました。

・「めぐ美も彼女と同じく『人気者』というポジションの端っこにいた」

・「友達は自然と増えていったし、盛り上がることも楽しめるようになってきた」

・「めぐ美は鬼ごっこやドロケイで活躍したし、友達から、友達の多い子だと思われるようになったら、学校が楽しくなった。その自信は、本からでは、得られないものだった」

体を使う外遊びで活躍しているところから活発な子になっていることがわかります。

また、友達が増えて学校が楽しくなり自信が持てるようになったこともわかるので、次のようにまとめました。

ひなっちの影響で活発になり友達も増え自信が持てるようになった。

〈先生〉

的確ですね。

これなら十分に合格点はとれますね。

では、一緒に文章を振り返ってみましょう。

傍線を含む段落の直前の段落からみます。

 だけども次へのステップを、彼女は逃してしまうのだ。本を読んでいると、ミイ姉に「ネクラ」とか「キモい」と言われたり、読んでいた本を取り上げられて隠されたりしたせいだとも言えるが、それだけでなく、めぐ美自信が性格を変えたかった。

いかがですか。

気になる言葉はありませんか?

〈生徒〉

先生、最後の「めぐ美自身が性格を変えたかった」という表現が気になります。

彼女は本が好きな自分を受け入れきれていない。そんな気がします。

〈先生〉

いいところに気づきましたね。

そこまでわかっていたら、素朴な疑問がわきますよね。

〈生徒〉

はい。なぜ、めぐ美は自分の性格を変えたかったのでしょう?

本を読むのが好きなのに、内気な自分をどこかで否定したいと思っていたのがなぜかとても気になります。

〈先生〉

素晴らしいです。

あなたはそうやって自分で考えを進められるのが強みですね。

文章を読んでいるときに抱いた疑問の答えを考えていくことが、本文を深く読み取るために必要なことなのです。

では、傍線の次の一文から読み進めましょう。  

 運動神経抜群で、男子より足が速いひなっちは、本など読まなかった。休み時間を告げるチャイムが鳴ると、真っ先に教室から飛び出してゆくような子だった。ドロケイでも脱走ゲームでもいつも大活躍のひなっちは、クラスの人気者だったから、そんな彼女に声をかけられて、嬉しかった。

いかがでしょう。ここで気になる表現はありますか。

〈生徒〉

「本など読まなかった」の「など」がちょっと気になります。「は」でもよかったと思うんです。それをわざわざ「など」にしたのには意味があるような気がします。

〈先生〉

いいところに気づきましたね。そうやって文の細部、特に助詞に気がいくようになるというのは素晴らしいことです。

では、ここで「など」を辞書で引いてみてください。

気になった言葉はすぐに辞書を引く。そんな習慣をつけられると大きな財産を得ることになりますよ。

〈生徒〉

はい。『明鏡』という辞書をお母さんが持っていたので、それを見てみます。

①類似の物事の中から例として示す。

②他にもあることを含みながら、特に一つを取り上げる。

③《否定的な表現を伴って》と取るに足りないものとして取り上げて否定の意を強める。

④《活用後の言い切りの形に付いて、発言や思考の表現を伴って》おおよその内容を反発の気持ちを込めて示す。  

先生、これは③ですね。めぐ美が本を取るに足りないものとして否定的にとらえているということが、この「など」から読み取れるのですね。

これでますます気になりました。

なぜ、めぐ美は自分の好きな本を否定しようとするのか、本好きな自分を変えたいと思うのか。

〈先生〉

いいですね。では、次の段落です。

 ひなっち、めぐ、と呼び合うようになった頃、めぐ美も彼女と同じく「人気者」というポジションの、端っこにいた。ひとりで本を読むのは寂しいこと、実際寂しくなくても、寂しそうにみられることだという考えを、めぐ美は自分に植えつけた。

ここで気になる表現はありますか?

〈生徒〉

「ひとりで本を読むのは寂しいこと、実際寂しくなくても、寂しそうにみられることだという考えを、めぐ美は自分に植えつけた」というところから、本当はめぐ美は本を読むのが好きだったのだとわかります。それなのに、本を読むのはいけないことだと無理して思い込もうとしていたとわかります。

〈先生〉

なぜ、そんなふうに思い込もうとしたのでしょうか。

〈生徒〉

「人気者」というポジションにいたかったからでしょうか。

〈先生〉

自分の考えに自信が持てないようですね。

ものを考える時の基本は、他の可能性と比べることです。

もし、めぐ美が本を読むのはいけないことだと思い込まなかったらどうなるかと考えてみるのです。

〈生徒〉

そうしたら、休み時間に本を読むことになって、「寂しそうにみられる」自分に戻ることになります。

そして、それは「人気者」というポジションから外れることになる。

やっぱり、「人気者」というポジションにいたかったからだとわかります。

先生、他の可能性と比べるってすごいですね!

先生、それからまた疑問がわいてきました。

なぜ、めぐ美は自分の好きなことをがまんしてでも「人気者」というポジションにこだわったのでしょう。

〈先生〉

今の質問は見事ですね。

こうやって疑問を持ちながら文章を読むことができたら、読解は簡単になりますよ。

「問い」があるから「答え」があるのです。

疑問を持つから読解が生まれるということなんですね。

では、その疑問を持ちながら次の文を読んでみましょう。

 低学年の頃の自分は、大人数でわあって盛り上がるノリには気後れした。だけど、ひなっちに引っ張られて遊んでいるうちに、友達は自然と増えていったし、盛り上がることも楽しめるようになってきた。めぐ美は鬼ごっこやドロケイで活躍したし、友達から、友達の多い子だと思われるようになったら、学校が楽しくなった。

〈生徒〉

先生、今の最後の一文がとても重要だと思います。

「友達の多い子だと思われるようになったら、学校が楽しくなった」ということは、それまでめぐ美は学校が楽しくなかったということですよね。本を読むのが好きな寂しそうな子と思われていて学校が楽しくなかったけど、友達の多い子だと思われるようになって学校が楽しくなった。

友達もほとんどいなくて学校が楽しくなかったので、自分の性格を変えたかった、好きなことを我慢してでも「人気者」というポジションにこだわったということなんですね。

〈先生〉

そして、この段落の最後の一文につながります。

 その自信は、本からでは得られないものだった。

さあ、それでは改めて変化の前と後とを整理してみましょう。

最初にまとめた内容を確認しましょう。

・「本が愉しかった頃のことを思い出した。せいぜい小学校の低学年くらいのことだった」

・「膝の上でそっと開くと知らない世界が広がった」

・「低学年の頃の自分は、大人数でわあっと盛り上がるノリには気後れした」

これにどんな内容が加わりますか。

〈生徒〉

・友達もほとんどいなくて学校が楽しめなかった。

・そんな自分の性格を変えたかった。

〈先生〉

いいですね。

では、変化後です。

・「めぐ美も彼女と同じく『人気者』というポジションの端っこにいた」

・「友達は自然と増えていったし、盛り上がることも楽しめるようになってきた」

・「めぐ美は鬼ごっこやドロケイで活躍したし、友達から、友達の多い子だと思われるようになったら、学校が楽しくなった。その自信は、本からでは、得られないものだった」

あとは、答えをまとめるだけです。

では、答えを書いてみてください。