国語が得意になる文章の読み方(第2回)
『虔十公園林』の第2回です。
〈本文〉
虔十はいつも縄の帯をしめてわらって杜(もり)の中や畑の間をゆっくりあるいているのでした。
雨の中の青い藪(やぶ)を見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでも翔(か)けてゆく鷹を見付けてははねあがって手をたたいてみんなに知らせました。
今日は二文目を丁寧に見ていきます。
それにしてもいまだ読点(「、」のこと)が一つもありません。
宮沢賢治独特の世界ですね。
【ポイント1】「ては」から情報を増やす。
「雨の中の青い藪を見ては」と「青ぞらをどこまでも翔けてゆく鷹を見付けては」が対応していることに気づきましょう。
一文目ですでに虔十は自然が好きだということを理解しています。
すなわち、この文は虔十が自然を好きだということを具体的に事例を挙げて説明してきたのです。
「助詞」に注目できるようになると読みは深まります。
【ポイント2】並立があったら抽象化
⑴時間
この一文で描かれているのは、「雨の中」と「青ぞら」なんです。
要するに、雨の日も晴れの日も、すなわち“いつも”だということがわかります。
⑵ふれるもの
さらに虔十が見ているものは「藪」であり「鷹」なんです。
「藪」は草木や竹が生い茂っているところです。
「鷹」は鳥、つまり動物です。
ここから虔十が見ているものは植物と動物のどちらもだとわかります。
⑶空間
さらに、虔十の視線を意識してください。
藪を見ているときは前を向いていますよね。しかも藪ですから、それなりの広がりは示す世界でしょう。
鷹を見ているときは上に向かって360度広がる空でしょう。しかも「どこまでも翔けてゆく」のですから、たいへんな広がりを想像させます。
ここでは地面についての言及はありませんが、虔十にとってふれる世界のすべて、それが自然であるとうかがえます。
虔十はいつも自然にふれて喜んでいるということがよくわかる一文なのです。
いつでもどこでも自分のふれるあらゆる自然が虔十を喜ばせるものだということが表されていると読むことができます。
※今回は並立があったら抽象化としていますが、今後は一つの事例からの抽象化も必要になります。対比と抽象化は常に意識していきましょう。
【ポイント3】行動からの心情把握
行動からの心情把握は物語読解の基本中の基本なので、例題を通じて考え方を定着させましょう。
〈例題〉なぜ彼は泣いているのですか? 10字以内で書きなさい。
〈答え〉(これはいろいろなものが出てきます)
・嬉しかったから。
・転んだから。
・悲しかったから。
・いじめられたから。
・感動したから。
・意地悪をされたから。
これを二つのグループに分けます。
心情とそれ以外です。
いじめられたり、意地悪をされたことが原因で心情が生まれます。
ここで抽象化。
行動の記述=原因(きっかけ)+心情
〈例題2〉なぜ彼は泣いているのですか? 50字以内で書きなさい。
いじめられて悲しかったから。(14字)
誰にいじめられたの?
クラスのみんなにいじめられて悲しかったから。(+8字=22字)
なぜいじめられているのか?
特に理由もないのにクラスのみんなにいじめられて悲しかったから。(+9字=31字)
本当に理由もないのにいじめられるの?
自分では思い当たる理由は何もないのにクラスのみんなにいじめられて悲しかったから。(こちらに変更+9字+40字)
不足している情報は?
どんなことをされるの?
自分では思い当たる理由は何もないのにクラスのみんなに無視されたりなどのいじめを受けて悲しかったから。(50字)
どう悲しいの?
自分では思い当たる理由は何もないのにクラスのみんなにいじめられて悲しくてたまらなかったから。(46字)
この子はどんな子だったの?
楽しかったはずの学校で自分では思い当たる理由もないのにクラスのみんなにいじめられて悲しかったから。(49字)
改めて抽象化。
行動の記述=「原因(きっかけ)+心情」に不足している情報を問いかけて考える。
一つ一つの表現に徹底的にこだわると今まで見てなかったものが見え始めます。
それが成長の証です。
ともにがんばりましょう。応援しています。