生徒への手紙「筑駒を受験できなかった君へ」
あの日、君が泣きながら筑駒を受けたいと言ったことを私は忘れない。
筑駒の合格へ向けて君はがんばったんだ。
そして、それは私との約束でもあったから。
君の実力からすれば筑駒の可能性は50%。
盤石の状態で受けるためにも、2日は確実におさえる。
その計画が2日の夜に砕かれたのだ。
冷静に考えれば、3日の筑駒は回避の一択。
でも、君は筑駒受験にこだわった。
あの夜、お父様からの依頼を受け、私は君に話をした。
「明日は海城を受けなさい」
私は自分のいたらなさを心から責めていた。
もし自分にもう少し力があったら、君にこんな思いをさせずにすんだのに。
「筑駒受験はできなくても、君には次がある。まず、明日の受験をしっかり受け切っておいで。それでいいから」
あの時の君の表情は思い出せない。
でも、「先生すみませんでした」という言葉は忘れない。
結果、君は2日〜4日に受験した学校はすべて合格。
2日に不合格となった学校は3日に繰り上がった。
あと1〜2点の差。
君は、その足りなかった1〜2点を味わう必要があったんだね。
高3になったときの君は大きく成長をしていたね。
「あの時には甘さがあった。もっとやれたはずだった」という言葉を聞いて、大学入試の成功を確信したよ。
あの進学校で文武両道を貫きながら10番以内を守り続け、東大に現役で合格。
あの校舎にいた4年間は、ほとんどの生徒が同じ駅を使っていたから、 毎年2月1日〜3日は駅で生徒を送り出していたんだ。1月31日の夜は校舎に泊まって、生徒一人ひとりへの手紙を書く。みんなと過ごした日々を振り返り、自分の力を最大限に発揮できるように思いを込めて書いていた。
君がその手紙を高3の夏から自分の机の前に貼って受験勉強に励んだとお母様から聞いて、本当に嬉しかった。
筑駒を受けられなかった悔しさが君を成長させてくれたのかもしれないね。
2日に足りなかった1〜2点。
それが君を成長させてくれたんだね。
そして私自身も大いに成長させてくれたんだ。
あの時の◯◯があったおかげで、今の自分がある。
そうやって生きれば人生に失敗はないんだよね。
いつも応援しています。
また会おう!