「国語を得意に!」〜中学入試応援ブログ〜

中学入試の国語を得意にすること、合格方法についてはお任せください。

国語が得意になる文章の読み方。実践編第1回。

宮沢賢治作「虔十公園林」を通じて、実際に小5や小6の授業で何を教えるのかをお伝えします。本文があったほうがよいので、お持ちでなければ青空文庫でご覧ください。

  

「虔十公園林」を使いながら物語を読む際に、どういう表現にどう立ち止まらなければならないのかを徹底して教えていきます。 

今回のシリーズが終わった時には、多くの生徒さんの志望校が変わっているはずです。

みなさまの成長を楽しみにしています。

 

これから物語の基礎をお伝えするに当たって、たった一つの前提をお伝えします。

物語を書いた人は作者と言われます。文字通り話を「作った人」です。

物語で描かれた内容は作者が作り上げたものなので、

すべての表現に作者の意図があると考えます。

それが大前提となります。

 

では、始めます。

 

「虔十はいつも縄の帯をしめてわらって杜(もり)の中や畑の間をゆっくりあるいているのでした。」

 

冒頭の一文で主人公である虔十についての説明が書かれてきました。

【発問】

「この一文からわかる虔十についての情報をできるだけ多く書いてください。」

 

【着眼点】

「縄の帯」

「いつも〜わらって杜の中や畑の間をゆっくりあるいている」

 

では「縄の帯」の考察を行っていきます。

「縄の帯」からの読み取りを自分で気づけるように発問をしていきます。

【発問】

「次の文からわかることを教えてください。」

・いつも半ズボンで登校している。

・いつも制服で登校している。

 

もし、半ズボンで登校することや制服で登校することが当たり前の状況であればわざわざいう必要はありません。

 

ですから、いつも半ズボンで登校している生徒は珍しいということがわかります。そこから、さらになぜいつも半ズボンなのだろう、という疑問がわいてきます。

二つ目の文も同様で、制服で登校しなくてもよいのにそうしているということがわかり、なぜそのようにしているのかという疑問まで生じることになります。

 

例題を学んだことで自分で気づける生徒が増えているはずです。

【発問】

「『虔十はいつも縄の帯をしめて』いることからわかることを教えてください。」

 

【着眼点】

「縄の帯」と書かれているのですから、他の帯もあるということですよね。

普通なら何の帯でしょうか。布の帯です。その中でも絹の帯は高価なものでした。

では「縄の帯」はいかがでしょうか。そうです。

貧しいということを示すものだったのですね。

 

また、「いつも縄の帯をしめてわらって」というところまで注目すると、虔十は他の人の目を気にしない人だとか、虔十にとって貧しいことは当たり前でそのことを全く気にしていないとか、という読み取りも可能になります。他の人と違って貧しい格好をしていてもわらって過ごしていることに注目します。

 

【学び】他のもの(反対のもの、普通のもの)と比べることで読み取りを深めていく。

 

【発問】

「『杜の中や畑の間』とありますが、どういうところですか?」

 

【着眼点】

「や」の働き。

 

「や」の働きを自分で気づけるように発問します。

【発問】

私は朝食のとき、デザートとしてりんごやみかんを食べています。

「結局、何を食べてるの?」

「果物!」

「ビタミンC!」

こんな感じで答えが返ってきます。

 

では、もう一問。

キムタクや福山雅治は先生とは違って(     )。

「(   )の中に入る言葉を教えて。」

「かっこいい」

「芸能人だ」

「素敵だ」

「お金持ち」

こんな感じですね。

 

ではみなさんに質問です。

「や」があったときに、みなさんがやるべきことを三字熟語で答えてください。

 

ここで知らない子が多い場合はさらに教えてしまいます。

 

【発問】

食べ物で何が好き?

・餃子

・唐揚げ

・お菓子

・イチゴ

・親子丼

・中華料理

この段階ではいろいろな答えを言います。

 

食べ物でどんなものが好き?

・果物

・甘いもの

・肉類

・中華料理

最初の問いかけの狙いに気づいた子も多いようです。

 

「同じようなことを聞かれているはずなのに、最初の問いと後の問いって答えが違うよね」

「最初の方は具体例を挙げるんだと思います。」

「後の方はまとめたものかな。」

こんなふうに考えを進めていきまとめに入ります。

 

「先生の好きなものはショートケーキと大福です。では、どんなものが好きなのでしょうか?」

「甘いもの」

「素晴らしい❗️」

「ショートケーキ、大福、チョコレート、まんじゅうなどの共通点を取り出して一つの考えでまとめます。これを具体の反対の抽象を使って抽象化といいます。では、みんなで声を揃えて、せーの」

「抽象化!」

では、みなさん今のことを自分自身に置き換えてノートにまとめてみて。

「書けたら手を挙げて」と言って一人ひとりを見ていきます。

自分自身で気づけるように問いかけ、考えさせ、自ら発言をさせ、自らのことに置き換えてノートに書くというように様々な感覚を駆使して定着を図ります。

 

では、最初の発問に戻ろうか。

「『杜の中や畑の間』とありますが、どういうところですか?」

 

「自然」

「自然豊かなところ」

こんな感じです。

 

【学び】「や」があったら抽象化する。

 

では、今日3つ目の【学び】へと進みます。これはある意味で一つ目の【学び】と同じ内容です。

 

【発問】

「なぜ、虔十は『ゆっくりとあるいている』のでしょうか」

 

これは中学入試で本当によく出題されるパターンの問いなので、心して臨みましょう。

いつものとおり、自ら気づけるように例題を示します。

 

【発問】

「次の表現の違いを説明しなさい。」

・ドアが閉まった。

・ドアを閉めた。

 

前者(「ドアが閉まった」の方)はドアが自然に閉まったのだけれど、後者は閉める動作をした人の意思で行ったということ。

 

そうなんだよね。こういう表現の違いはよく出題されるから意識しておきましょう。

 

次に、「大きな声を出した」理由を5字程度で答えなさい、という問題を考えてみてください。

 

・驚いたから。

こちらは、予想しないことが起きたときの反応として「大きな声を出した」ときの答えです。

・驚かすため。

こちらは、相手にとって予想外のことをしたときの答えです。

 

つまり、後者はわざと「大きな声を出した」ということになります。

ドアを閉めたもそうですし、「大きな声を出した」の校舎のパターンもそうですが、人のわざとやった行動に関する問いが出題されることは非常に多いのです。

 

わざとやった行動、それを意図的な行動といいます。

意図的な行動の考え方は、本日の【学び】の最初でも話した、「反対のものと比べて考える」ことと同じです。

 

つまり、「大きな声を出した」だったら、小さな声だったらどうなるかと考えるのです。反対から考えて答えるときは元に戻します。

 

具体的に示します。

問い「大きな声を出した」のはなぜですか。

考え方①大きな声を出さなかったらどうなるか。すなわち、小さな声を出したらどうなるかと考える。

→相手は驚かない。

考え方②大きな声を出すとどうなるかと考える。

→相手が驚く。

答え 相手を驚かすため。

 

これを抽象化して先に【学び】を示します。

【学び】

意図的な行動の問いに対する考え方。

①そうしないとどうなるかと考える。

②そうするとどうなるかで答えを出す。

 

では、「ゆっくりあるいている」理由を考えましょう。

①ゆっくりあるかないとどうなるか。速く歩いたらどうなるか。

この場合、実際に速く歩くときはどんなときかを考えます。すると、急いでいるときというのがすぐ出るはずです。では、急ぐというのはどういうことでしょうか。早くどこかに着こうとしているときです。つまり、目的があるときです。

②ゆっくりあるくとどうなるか。この場合は自然の間を歩くので、速くあるいたときと比べて自然に長くふれることになる。

答え 自然に長い時間ふれていたかったから。

 

これでよいのですが、この答えを見ると疑問がわきますね。

なぜ虔十は自然に長い時間ふれていたかったのでしょうか。この一文の中に「いつもわらって」という表現がありました。すなわち虔十は自然の中にいると自然に笑いが出ていることがわかります。ここから、虔十は自然が好きだったんだと考えることができます。

 

ここまでの情報をまとめると、

思わず笑顔になってしまうほど好きな自然を十分に味わいたかったから。

などと答えることができます。

 

【学び】記述の答えは「なぜ」を残さない。

 

この一文で実に多くの情報を得ることができました。

では、いよいよ本日最後の問題です。

【発問】

「なぜ、作者はこの一文からこの物語を書き始めたのでしょうか。」

 

【着眼点】

作者の意図的な行動です。

①そうしないとどうなるかと考える。

②そうするとどうなるかで答えを出す。

 

①こう書き始めなかったらどうなるか。

②こう書き始めることでどうなるのでしょうか。

 

時代の設定として着物を着ていた頃のことだとわかります。

場所の設定として自然豊かなところであるとわかります。

主人公の設定として自然が好きな人だということがわかります。

たった一文で読者にこの物語に必要な情報を与えてくれているのです。

すごいですよね。

 

本日の最後に、

「読解」とは何かを皆さんにお伝えします。

読解力があるとかないとか人はよくいいますが、その言葉の定義を明確に行っていない人がたいへん多いです。

筆者の言いたいことを読み取る力では入試の国語における読解力としては不十分です。

入試に出てくる文章でその文章で書き手が言おうとしていることが伝わらない文章はほとんどないからです。生徒たちもそれは答えられるんです。でも、部分部分での読解が不十分になるのです。

では、部分における不十分な読解が生まれるのはなぜか。

それは本日書いてきたことです。

他の可能性と比べてその事柄の意味を浮き上がらせる力、言い換えれば、問いに対して答える力です。

すなわち、

「読解=問い+答え」となるのです。 

このブログを通じて、徹底的にまずは

問う力を身につけていきましょう。

そうすれば文章から得られる情報が変わります。

今まで読んでいた文章から全然違った情報が顔を出し始めるはずです。

 

普通に小学校の授業についていけている生徒であれば偏差値60の学校に合格する力はつきます。小学校で上位にいる生徒であれば御三家に合格する力をつけることができます。

 

ともにがんばりましょう。応援しています。