「国語を得意に!」〜中学入試応援ブログ〜

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国語が得意になる文章の読み方(第7回)

前回は、虔十の初めての願い事がかなうことになった場面で終わりました。

 

〈本文〉

 虔十はまるでよろこんですぐにまっすぐに家の方へ走りました。

 そして納屋から唐鍬を持ち出してぽくりぽくりと芝を起こして杉苗を植える穴を掘りはじめました。

 虔十の兄さんがあとを追って来てそれを見て言いました。

「虔十、杉ぁ植える時、※掘らなぃばわがなぃんだぢゃ。明日まで待て。おれ、苗買って来てやるがら。」

 虔十はきまり悪そうに鍬を置きました。

 次の日、空はよく晴れて山の雪は真っ白に光りひばりは高く高くのぼってチーチクチーチクやりました。そして虔十はまるでこらえ切れないようににこにこ笑って兄さんに教えられたように今度は北の方の境から杉苗の穴を掘りはじめました。実にまっすぐに実に間隔正しくそれを掘ったのでした。虔十の兄さんがそこへ一本ずつ苗を植えて行きました。

 

※掘らなぃばわがなぃんだぢゃ…杉は植えるときに掘らないとだめだ、ということ。杉が湿度の高い土を好むことからとのこと。

 

「まっすぐに家の方へ走りました」

 まっすぐに家へ帰ったという表現があれば、ふつうは寄り道をしないで帰ったということを示します。今回は、文字どおり「まっすぐに」走っていったことがうかがえますが、要するに一刻も早く家に行こうとしたというのがわかります。

 では、なぜそんなことをしたのでしょうか。

 次の文を読むとわかりますね。杉苗を植える穴を掘りたかったからです。ここに虔十の喜びが表れています。

 

 ところで、虔十が一目散で帰っていったあとの3人の身になってみましょう。

 杉苗を買ってやることになったところで、虔十はいきなり家の方へ向かって走り去ったのです。

 これはどうしたことだ? と思いますよね。

 だから、お兄さんが「あとを追って来」たのです。

 

 そこで虔十が杉苗を植える穴を掘っているのを見て、杉苗は植える時に穴を掘らないとだめなんだと注意しました。自分のそそっかしさに「きまり悪そうに」した虔十でした。

 

 きまり悪い、

という言葉ですが、これは入試にもよく出題されます。

 意味は、「人前でちょっとした失敗をしでかすなどして、内心恥じ入る様子だ」(今回は『新明解国語辞典』からの引用です。

 

 そして「次の日」になります。

 この情景描写をみなさんはどう読みますか?

 

 冒頭の情景描写については動画で説明していますので、そちらを見てもらえたらと思います。

https://youtu.be/KlG76z6Sd_w

 

 情景描写の読解って実は非常に簡単です。

 情景描写のはたらきと解法を知っていれば容易に解けます。

【はたらき】内容暗示、心情暗示

【解法】書かれてあるもののイメージ+文脈判断

 

「次の日、空はよく晴れて山の雪は真っ白に光りひばりは高く高くのぼってチーチクチーチクやりました。そして虔十はまるでこらえ切れないようににこにこ笑って兄さんに教えられたように今度は北の方の境から杉苗の穴を掘りはじめました。」

 

 では、丁寧に確認していきます。

「次の日」は、虔十が杉苗を買ってもらえることになった日の翌日であり、お兄さんに「明日まで待て。おれ、苗買って来てやるがら。」と言われた、その「明日」にあたる日です。すなわち、虔十の願いであった杉苗を植えることができる日なのです。

 

「空はよく晴れて」

「山の雪は真っ白に光り」

「ひばりは高く高くのぼってチーチクチーチクやりました」

 いかがですか。いかにも明るく楽しそうな感じが伝わりますよね。

「そして虔十はまるでこらえ切れないようににこにこ笑って」

 さきほどまでのいかにも楽しそうな雰囲気の描写に続いて、幸せいっぱいの虔十が描かれます。虔十の幸せいっぱいの心情を表現していたのが、この情景描写だったのです。

 

 しかも、空、山、雪、ひばりと虔十の好きな自然の風物が描かれているのです。

 さらには、

ひばりは高く高くのぼり

虔十

というように、高いところから低いところへ、広い視野から狭い視野へ、という変化まであるのです。

 虔十の喜びにスポットライトがあたるかのような演出ですね。

 ちなみに今の読解を生むための問いかけは、なぜ、空、山、ひばりの順番で書いたのだろう、です。とにかく他の可能性と比べるということが大切です。

 

実にまっすぐに実に間隔正しくそれを掘ったのでした。虔十の兄さんがそこへ一本ずつ苗を植えて行きました。

 「実にまっすぐに実に間隔正しく」という表現から虔十の几帳面さがうかがえます。また、杉苗を大切にする思いにもあふれています。さらには、重要な伏線にもなっているのです。

 

細部へのこだわりを持つことが、読解力をつける近道になります。

丁寧に丁寧に読むことを習慣にしましょう。

そうすれば、今まではとらえることのできなかった情報に気づけるようになります。

そうなったらあとは仕上げです。

問題を時間内に解くための読み方に変えていきます。

すなわち、問いかけはするけれど、その段階で答えは考えずに読み進める。

読み進めるうちに答えが出てきたものだけを拾い上げる。

これで相当な高得点をとることができます。

 

「虔十公園林」が終わったら、時間内に問題を解くための文章の読み方をお伝えします。