国語が得意になる文章の読み方(第14回)
『虔十公園林』の第14回目です。
丁寧に文章を読んでいくことで見えるものが増えますよね。
こういう喜びを多くの人に味わってもらえたら嬉しいです。
今回のブログでは、以下の2点を学びます。
①作者の表現上の工夫。
→対比からの抽象化につながります。
②記述問題のポイント。
→「なぜ」を残すな、ということを学びます。
《本文》
あっちでもこっちでも号令をかける声ラッパのまね、足ぶみの音それからまるでそこら中の鳥も飛びあがるようなどっと起こる笑い声、虔十はびっくりしてそっちへ行って見ました。
〈解説〉
この文からはいかにも楽しそうに遊んでいる様子が感じられますね。どんな工夫がされているのでしょうか。
号令をかける声
ラッパのまね
足ぶみの音
笑い声
このように体言が四つ並んでいるのです。
声がしていた、さらにはラッパのまねまで感じられる。なんて表現ではありませんね。
もし、この一文で設問を作るとしたら、「この一文から感じられることを、作者の表現上の工夫を意識して答えなさい」という感じですかね。
答えは、次のとおりです。
体言を四つ並べることによって、そこで遊んでいる人たちのいかにも楽しそうな様子が臨場感をもって伝わってくる。
いかがでしょうか。ちょっとした一文ですが、作者の工夫を意識して読むことって楽しいですよね。
それから、この一文の最後にあった「行って見ました」ですが、「行ってみました」ではないのですね。こうやって他の表現と対比させると、理解できることがありますね。
「〜してみる」というのは、ためしに…する、という意味になります。でも、今回は「行って見ました」なので、行って、そこで見ましたという感じも加わりますね。何が起きているのかを確かめるためにためしにそこへ行き、実際に自分の目で見た、というふうに感じることができます。
こんなふうに、対比させるとそれまで気づかなかったことを考えることができるかもしれません。その練習だと思ってくれれば十分です。
《本文》
すると愕(おどろ)いたことは学校帰りの子供らが五十人も集まって一列になって歩調をそろえてその杉の木の間を行進しているのでした。
〈解説〉
これはまさに驚きですよね。
杉林に五十人もの子供たちが集まって杉の木の間を行進しているのです。
さて、ここで一問作ってみましょう。
「なぜ、虔十は愕いたのですか。説明しなさい」
そんなの簡単だよ。
学校帰りの子供らが五十人も集まって一列になって歩調をそろえて杉の木の間を行進していたから。
これが正解です! と考える人も多いですよね。
ここで一つ、みなさんに記述問題の答えを書くときのポイントをお伝えします。
それは、「なぜ? を残さない」ということです。
今回は、虔十が愕いた理由を聞かれた問いです。
この答えだと、なぜ子供らが五十人も集まって杉の木の間を行進していると愕くのかという疑問が残ります。
そうなのです。これでは、愕いたきっかけを答えただけなのです。
一度本文を忘れて、愕くとはどういうことかを考えてみてください。それは、予想外のことが起きてびっくりしている状態ですよね。
ですから、先程の答えが予想外のことだったということを書き加える必要があるのです。
答えは、実際に自分で書いてまとめてみましょう。