国語が得意になる文章の読み方(第5回)
『虔十公園林』第5回です。
国語が苦手な小学校6年生。
4・5年生で国語が苦手な人。
高校受験生でも国語が苦手な人は是非読んでください。
〈本文〉
なるほど遠くから見ると虔十は口の横わきを掻いているかあるいは欠伸(あくび)でもしているかのように見えましたが近くではもちろん笑っている息の音も聞こえましたし唇がピクピク動いているのもわかりましたから子供らはやっぱりそれもばかにして笑いました。
ここは前回学んだことの繰り返しになりますので、前回の内容をご確認ください。
国語が得意になる文章の読み方(第4回) - 国語を得意に!(中学入試応援ブログ)
〈本文〉
おっかさんに言いつけられると虔十は水を五百杯でも汲みました。一日一杯畑の草もとりました。けれども虔十のおっかさんもおとうさんもなかなかそんなことを虔十に言いつけようとはしませんでした。
おっかさんに言いつけられると虔十は水を五百杯でも汲みました。一日一杯畑の草もとりました。
国語を得意にするためのポイントは情報を増やすことです。
そのための問いかけの基本は、不足情報と得られる情報です。
この一文の着眼点は「と」「でも」です。
「おっかさんに言いつけられると」なのですから、他の人の言いつけではないという当たり前のことに気づけます。親のいいつけは守る素直ないい子、という虔十の性格がうかがえます。
「と」は他の情報を得ることのできる大切な言葉です。
・栓をひねると、水が流れだした。(ひねらなければ出なかった)
・窓を開けてながめると、町のネオンがまたたきはじめていた。(開けなければ気づかなかった)
・このボタンを押すと、ふたがあきます。(押さなければあかない)
・この状態がつづくと、たいへんなことになる。(つづかなければ、そこまでひどい状態にはならない)
しかも「水を五百杯でも汲」むのです。ここが「でも」になっていることに注目してください。言い換えれば、「だとしても」となります。水を五百杯だったとしても汲むということ。すなわち、ふつうの人ならやらないようなことでもするとなります。
だから、この部分から虔十の素直さが強く感じられるのです。
「でも」も他の情報を得ることのできる大切な言葉です。
「一日一杯畑の草もとりました」と水の話と同じような話が繰り返されます。これによって、虔十の素直さがさらに浮かび上がりますし、虔十が農家の子供なのだということもわかります。
この二つの文は、虔十の性格と環境とを同時に表してくれるものでした。
第1回で「杜の中や畑の間」で自然の中と抽象化したように、並立の関係は必ず抽象化してください。そうすることで読み取りが深まります。
それでは、今日のメインです。
【問い】「虔十のおっかさんもおとうさんもなかなかそんなことを虔十に言いつけようとはしませんでした」とありますが、なぜ「虔十に言いつけようと」しなかったのですか。
意図的な行動の考え方を使って解きます。
こちらで詳しく解説していますのでご覧ください。
国語が得意になる文章の読み方。実践編第1回。 - 国語を得意に!(中学入試応援ブログ)
こちらも参考にしてください。
国語が得意になる文章の読み方(第4回) - 国語を得意に!(中学入試応援ブログ)
意図的な行動の考え方を教えておいてこういうのもおかしな話ですが、
大事なことは解き方を学ぶことではありません。
大事なのは考え方です。
「赤」という言葉は他の色があるから生まれた言葉です。
その色単独で言葉が生まれたわけではありません。
常に他の可能性と比べることです。
特に必要なことは反対のものと比べること。
この場合は、言いつけようとしないのですから、反対は言いつけるです。
常に、反対のものと比べる。
これをクセにしていれば解法など覚えなくても大丈夫なんです。
さて、言いつけたらどうなるでしょうか。
もちろん、虔十は言いつけをやることになります。
その言いつけは「そんなこと」と書かれているので「どんなこと」かという抽象化が必要です。
具体的には「水を五百杯でも汲」むことですし、「一日一杯畑の草」をとることです。これらは、たいへんなことですね。
ここまでの内容を整理します。
なぜ、言いつけようとしなかったのか。
言いつけたら、虔十はたいへんなことをやることになります。
言いつけなければ、虔十はたいへんなことをせずにすみます。
ですから、答えの最後は次のようになります。
虔十にたいへんなことをさせないようにするため。
虔十にたいへんなことをさせたくなかったから。
次に、情報を追加していきます。
答えを見て知りたい情報を加えればよいのです。
なぜ、虔十はたいへんなことをするのだろう?
その疑問を本文からわかる範囲で考えて行きます。
それは、虔十は言いつけはどんなことでも守るからです。
この情報を加えると次の答えになります。
どんな言いつけでも必ず守る虔十にたいへんなことをさせないようにするため。
さきほど「常に、反対のものと比べる」と書きましたが、同じように「常に」してほしいことがあります。それは抽象化です。なるべくまとめて考えるようにしましょう。
この場合は、なぜどんな言いつけでも守るのだろう? と考えても出ますね。
【答え】
親に対して素直な(忠実な)虔十にたいへんなことをさせないようにするため。