国語が得意になる文章の読み方(第8回)
〈本文〉
その時野原の北側に畑をもっている平二がきせるをくわえてふところ手をして寒そうに肩をすぼめてやって来ました。平二は百姓も少しはしていましたが実はもっと別の、人にいやがられるようなことも仕事にしていました。
物語読解の基本として、すべての表現に作者の意図があるという意識を持っておきましょう。とにかくあらゆることに疑問を持つのです。
・なぜ、野原の北側なんだろう?
・なぜ、きせるをくわえさせたのだろう?
・なぜ、ふところ手をして寒そうに肩をすぼめてるんだろう?
そして、ものを考えるときの基本は対比と抽象化です。つまり、「なぜ野原の北側なんだろう?」という問いは「なぜ野原の南側ではなかったのだろう?」とセットにして考えるのです。それだけで答えは出しやすくなるはずです。「きせる」「ふところ手」「寒そうに」「肩をすぼめて」も同様で、反対をイメージしてください。颯爽と笑顔で歩いているのとは違うということに気づけますよね。すべての表現が、平二が人からいやがられる人間なのだということを示しているのです。
さて、みなさん、ここでもう一つ大切な疑問を持ってほしいのです。
・なぜ、作者はここで( )
これまでの話の展開を思い出すと、空欄を埋めるのはそれほど難しくないはずです。
そして、この疑問を持てると、次の展開の予測もできます。
国語が得意になる文章の読み方。実践編第1回。 - 「国語を得意に!」〜中学入試応援ブログ〜
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国語が得意になる文章の読み方(第3回その1) - 「国語を得意に!」〜中学入試応援ブログ〜
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国語が得意になる文章の読み方(第5回) - 「国語を得意に!」〜中学入試応援ブログ〜
https://tanoshiijuken.hatenablog.com/entry/2020/06/07/132831
国語が得意になる文章の読み方(第7回) - 「国語を得意に!」〜中学入試応援ブログ〜
先ほどの問いかけの答えです。
・なぜ、作者はここで平二を登場させたのか。
ここで人にいやがられる仕事をしている平二を出さなければ、何一つ親に頼み事もしたことがなかった虔十の願いである杉苗を植えることを兄に手伝ってもらってやることができ、それが見事に育ちました、という展開が予想されます。そこに平二を登場させたのです。続きを予想してみてください。
中学受験 おすすめの漢字問題集
中学入試まであと4ヶ月。
時間を有効に使って勉強したいですよね。
今日は、漢字の仕上げにふさわしい問題集を紹介します。
漢字テストは、1冊をじっくりやっているだけではダメなんです。
違う例文になったときに間違ったり、違う字との組み合わせになったときに間違ったりするのです。
ですから、最後はもう1冊の漢字の問題集がどうしても必要です。
それでは、おすすめの漢字をレベル別にお伝えします。
漢字が苦手な人向け。
漢字の書き取り、読み取り、同音異義語、同訓異字、四字熟語、対義語・類義語等あらゆる漢字の出題に対応しています。
しかも、でる順に配列されているため、入試によく出題されるものから勉強できるというのは利点といえます。
この問題集使用上の注意を1点だけあげておきます。読み取りに出題されているものまで書けるようにしておきましょう。
漢字が苦手な人向け。
同訓異字、同音異義語、同じ音の漢字、似た漢字など、間違えやすいものを定着させるのにたいへんよい問題集です。同訓異字は、漢字の意味と使い方が定着できるように工夫されており、苦手な生徒が一人で勉強するのにうってつけのものとなっています。
ただし、問題数が少ないので旺文社のと併用するのがよいでしょう。
漢字の仕上げ用。
旺文社の出る順では物足りない人にうってつけです。
漢字の問題集としては珍しく解答が充実しています。解答に、その字を含む他の熟語の出題例が出ているため、一題で複数の熟語を学ぶことができます。
私は6年生の5月頃までは漢字テストで「復旧」をやった場合、往復・復路・復活・復帰・復元・回復・修復・一陽来復・復習・復唱・反復・復命・拝復・報復まで確認し、さらには「複」「腹」「服」を使った熟語の確認まで行います。
プロ講師が生徒に点数をとらせるためにどうしたらよいかを考え抜いて作った問題集だということがよくわかります。本当におすすめです。
渋谷幕張や早稲田中など小学校の範囲を超えて出題する学校を受ける生徒向け。
志望校が小学校の範囲からしか出題しない場合は、2610か1560がよいでしょう。
しかし、範囲外が出題される場合は、ここまで勉強しなければなりません。
漢字の1点、2点で合否が決まる場合もあります。
また、漢字の勉強によって語彙が増え、読解力向上につながることにもなるので、漢字が得意でない生徒はやり続けた方がよいでしょう。
是非、がんばってください。
2020年度 渋谷幕張中1次試験 国語解説(その2)
2020年度 渋谷幕張中1次試験 国語解説(その1)
https://blog.hatena.ne.jp/tanoshiijuken/tanoshiijuken.hatenablog.com/edit?entry=26006613627199372
3)大問1の解説
問五 具体例の説明 得意は正解、苦手も不正解でもOK
「例についての説明として最も適当なもの」を問われています。例はわかりやすくするために書かれるものなので、何をわかりやすく伝えようとしているかを二つの視点で考えます。
1)文脈
文脈を追いかけることで、筆者がわかりやすくしようとしたものをつかみます。
2)具体例の抽象化
具体例を抽象化することで、筆者の伝えようとしたことをとらえます。
まずは文脈から考えます。(中略)のあとをご覧ください。以下のような流れになっています。
・「空気」はどのように醸成されるか、という疑問の提示。
・「臨在感的把握」から生まれる、という答えが難しいのでどういうことか見るという話。
・「臨在感的把握」の具体例として、イスラエルでの発掘調査の話の紹介。
・例が終わったあとで、何でもない物や何でもない言葉に、何らかの力を持った霊のごときものが臨在しているように把握されることを「臨在感的把握」だというまとめ。
まとめます。
イスラエルでの発掘調査は、「臨在感的把握」をわかりやすくするためのものであり、「臨在館的」把握とは何でもないものに何らかの力が臨在しているかのように把握されることである。そして、それが「空気」が生まれるもとである。
次に、例の抽象化を行います。
イスラエルでの発掘調査には以下のことが書かれてあります。
・日本人は1週間ほどで病人のようになった。
→人骨や髑髏からまがまがしいものの臨在を感じた。
・ユダヤ人は元気なまま。
→一神教なので骨はただの「もの」にすぎない。
まとめます。
日本人は人骨や髑髏をただの「もの」ととらえるのではなく、そこにまがまがしいものの臨在を感じたことで、病人のようになった。
これら2点を意識して選択肢を見ます。正解はオになります。
オ 何でもないものに特別な力を感じるということが「空気」の発生する原因であり、その具体例として、日本人が人骨や髑髏に祟りのようなものを感じるということを説明している。
いかがでしょうか。こう考えるとオが正解であることは容易にわかるはずです。この問いを確実にとれるようになれば、国語は安定するはずです。
問六 同内容の記述問題。得意、苦手ともに△はとりましょう。
この問いは「本文全体をふまえて説明しなさい」という条件がついているので、本文の内容をふりかえってみましょう。
①「空気」は議論や主張を超えて意志決定を行う力がある(編集部の話や戦艦大和の出撃を例とする)。
→問四で出題されている。
②「空気」は何でもないものに特別な力を感じる臨在感的把握から生まれる(イスラエルでの発掘調査を例とする)。
→問五で出題されている。
絶対の神を持たないために、絶対化される対象はあらゆるところにあり、「空気」に支配されることになる。
③「空気」の特徴二つ。
・「空気」ができると絶対的に拘束される(西南戦争の新聞報道を例とする)。
※「もう一つ」という関係を示す言葉をおさえることが重要。
・対立概念で対象を把握することを排除する=相対的な見方を排除する。
④一神教の世界との対比。
・一神教の世界=絶対的なものは神だけ→物事を対立概念で把握することを可能にし「空気」を相対化する。
・日本→二重性を認めない=「空気」を絶対化する
→物事を対立概念で見ることがない→「空気」に支配される
①〜④を箇条書きにします。
①「空気」は議論や主張を超えて意志決定を行う力がある。
②「空気」は何でもないものに特別な力を感じる臨在感的把握から生まれる。
③「空気」ができると絶対的に拘束される
「空気」は相対的な見方を排除する。
④日本は、一神教の世界とは違い物事を対立概念で把握することがないために「空気」を絶対化する。
①〜④をまとめれば答えができあがります。最後の部分は本文にない言葉ですが、「支配」に当たる内容にしています。
日本では、一神教の世界とは違い物事を対立概念で把握することがないために、何でもないものに特別な力を感じる臨在感的把握から生まれる「空気」を絶対化するので、議論や主張を超えて人がそれに従わざるを得なくなるということ。
問四、問五と解かせながら、問六で本文全体のまとめを行わせるのは、まるで東大の入試問題のようですね。
こういう問いの場合は、問四や問五の答えを使ってまとめると時間短縮にもなるので、それを意識した答えにしています。
国語が苦手な生徒が△をとるための考え方も記しておきます。
「空気」の支配が傍線で、設問で「どういうこと」か聞かれているので、「空気」が支配すること、という内容を答えればよいことに気づきます。
次に、「空気」が何を支配するのだろう? と考えます。このように、傍線の内部になる不足している情報を考えるようにするのです。
そして、傍線の前後から、「空気」は二重性を認めないことと、物事を対立概念で見れば「空気」に支配されない、ということを読み取ります。二重性を認めないというのは絶対化するということまではつかみましょう。
これらをまとめます。これで点にはなるはずです。
物事を対立概念で見ないために絶対化された「空気」が日本人の意志決定を制限しているということ。
問七 本文の内容把握。得意は正解、苦手は△。
アは選べるはず。
イには論理的は判断があったと書かれているので、空気と矛盾します。これは容易に外せます。
ウの「実際には正義の軍」というのは本文には書かれていません。後半部が見事に書かれてありますが、最初に違和感を覚えることができるので、これも間違える人は少ないでしょう。
エは「臨在感的に把握する空気が生じた」という表現に迷う生徒が出るはずです。本文では「空気」は「臨在感的把握」から生まれると書かれているので、「空気」はすべて「臨在感的に把握する」ものでよいのです。西郷のところには「臨在感的に把握」と書かれていたのでとまどいはなかったはずですが、戦艦大和のところで迷ったことと思います。
オの文は、「もともと」「絶対視していたから」「絶対的命題に疑いを持たなかった」とあるが、本文では相対的に見ることができると思っていなかったために絶対的命題に疑いを持たなかったという文脈になっています。また、「忠君愛国」のようにもともと絶対視されていたものもなくなったりしていることからもわかります。
2020年度 渋谷幕張中1次試験 国語解説(その1)
2020年度 渋谷幕張中1次試験 国語解説(その1)
1)はじめに
中学受験の合否は4教科の合計点で決まります。
だから、科目別の目標点は人それぞれに違うものになります。
それなのに、すべての教科をできるようにしてしまうあまり、勉強に対する自信を失っていくケースが多々あるのが現状です。一人でも多くの方が、自分の成績を正しく把握し、自分の可能性を信じて第一志望校受験に向かえるようサポートしたいという思いでこのブログを書きます。
今回は、渋谷幕張の2020年度の国語の全問解説を行うことで二つのことをお伝えしたいと思っています。
一つは、国語で合格点をとるのは実は難しくないということ。
そして、もう一つは、とるべき設問とそうでない設問との区別を行い、目標点を明確にすること。
渋谷幕張のように合格者平均点がそれほど高くない学校は、1科目でも得意教科があると本当に有利に働きます。国語が得意な生徒は国語でかせぎきれる目標点数を、そして国語が苦手な生徒も、解説を読めば悪くてもこれはとれると思ってもらえる点数を設定しました。今とれていなければならないのではなく、入試本番までにとれるようになっていればよいのです。
このブログを読み切ったときには明るい未来が待っています。
皆様の受験が素晴らしいものとなることを願っています。
2)目標点数
合格者平均点と受験者平均点そして合格最低点
国語 算数 社会 理科 合計
合格者平均点 56.0 61.3 47.4 57.1 221.8
受験者平均点 48.8 45.0 43.1 48.9 185.8
合格最低点 204
国語が得意な生徒の目標点
国語以外の3教科が受験者平均点−5点でも合格する点数を目標とします。
よって、72点になります。
国語が苦手な生徒の目標点
国語が現在苦手でも、今回の解説ブログを通じて学べば渋谷幕張を受けようとしている生徒であれば合格点はとれるようになります。
合格最低点は合格者平均と受験者平均のおよそ半分なので、国語は53点とします。
3)大問1の解説
問一 漢字の読み書き 得意3問中3問、苦手3問中2問を正解すべき問題。
a 採用
b いまし(戒める)
c ごんげ(権化)
「戒める」は中学校で習う字なので読めない可能性あり。
「権化」は『予習シリーズ「漢字とことば」』6年下P.90にも載っているレベルです。
ここで1問しかできなかった方は、漢字の問題集を新たに購入いただき取り組んでください。渋谷幕張中は、今回の「戒める」のように中学校で習う漢字も出題されますので、そこまで載っている問題集をやるのがよいでしょう。お勧めの問題集を載せておきます。
問二 語句の意味 得意・苦手ともに正解すべき問題。
「クリティカル」ということばの意味を問われた問題ですが、知識で解く必要はありません。文脈で判断します。
傍線と答えとの内容がイコールとなる場合は、傍線内部のことばの意味+本文での使われ方を把握して解いてください。
今回は傍線内部のことばの意味を問われているので、それを考える必要はありません。大事なのは、本文での使われ方を把握することです。
具体的に見ていきます。「クリティカル」を含む一文を読むと、「空気」による決定はクリティカルな場面だととんでもないことになりうるということがわかります。また、その例として戦艦大和出撃の話が出てきました。
ここから、大事な関係が読み取れます。すなわち、とんでもないこと=戦艦大和の出撃です。なぜ、戦艦大和の出撃はとんでもないことになるのでしょうか。とんでもないことというのは、常識では考えられないようなことです。戦艦大和の出撃は戦略的に無意味であることが明白だったのですから、とんでもないことと言えるのです。そして、そのとんでもないことが起きたのはクリティカルな場面だったからなのです。
すでに沖縄戦が始まっており、そこへの出撃が無意味であるということは、日本軍にとってたいへんまずい状況であったことがわかります。それがクリティカルな場面なのです。あとは選択肢を見て判断します。答えは危機的になります。
クリティカルって何だろう? 知らない言葉だ、ああどうしよう。こんなふうにあわてなければ解ける問題です。
ポイント①
傍線と答えとの内容がイコールとなる場合は、傍線内部のことばの意味+本文での使われ方を把握して解く。
ポイント②
戦艦大和の出撃=とんでもないこと
このようにイコールが成り立つ場合は、なぜこのイコールが成り立つのかを考える癖をつけよう。コツは語句の意味を考えながら文脈の確認をすることです。とんでもないことってどんなことかな? と考えながら、戦艦大和の出撃ってどうしてとんでもないって言えるんだろう? と本文で確認していくのです。
問三 空欄補充+語句の意味 得意・苦手ともに正解すべき問い。
空欄補充の問いに限りませんが、国語の問題は必ず本文に根拠となる部分があります。まずは前後の内容を正しくつかみましょう。
空欄の前後を見ると、完全な二極にならない状態のものだとわかります。このときに、「何が?」と問いかけることがコツです。
すると、物事には必ず対立する二側面があるが、完全な善、100%の悪はない。ある部分ではよくても、他の視点で考えれば違うというようにという内容を受けて、完全な二極にならないという話につながることがわかります。
「白黒」というのは、「物事の是非。善悪。正しいか正しくないか。また、罪がないか罪があるか」(『大辞泉』より)という意味があります。ですから、答えはオセロになります。仮に「白黒」の意味がわからなくても「二極」とあるので、この選択肢を選ぶのは容易です。
ポイント③
根拠をとらえるときに、「いつ・どこで・誰が(何が)・何を・どのように」という問いかけを癖にしておきましょう。
問四 同内容の説明問題 得意・苦手どちらも△は確実にとること。
A君は太陽のようだ。
この比喩は、A君と太陽とに共通点があるからこそ成り立つものです。たいへん簡単に図式化すれば、A君=太陽、となります。比喩の読解は、この両者の共通点を考えればよいのです。考え方は、太陽をイメージして文脈でのA君に重ねるのです。
今回の問題は、空気=絶対権をもつ妖怪という図式が成り立ちます。ですから、絶対権をもつということの説明と、妖怪の説明の2点が必要になります。
絶対権をもつといういうのは、普通ではありえないことまで行わせる力があるとか、あらゆる議論や主張を超えて人々の決定を支配するなどと答えます。これに、妖怪の感じを加えます。本文のことばを使いつつ、科学的には明らかにできない不可思議な存在というようにまとめます。
この問いは、妖怪の説明までを意識したかどうかで○になるかが決まる問いです。
ポイント⑦
A=Bの図式が成り立っている場合は、共通点を考える癖をつけること。
問五以降は次回をご期待ください。
「 」の特別な使い方を学ぼう!
選択肢問題の対策
選択肢問題をしっかりととりきる生徒は意外に少ない。
国語を得意にしている生徒でも、記述は×にならないから選択肢よりずっとやりやすい。こう言う生徒もいるくらいである。
国語が苦手な生徒の場合は、まず最初に消すべき選択肢を正解とすることさえあるのである。
まず、選択肢問題を間違える理由を二つのパターンに分けて解説しようと思う。
1)国語が苦手な生徒の場合
その選択肢に書かれている内容が正しいかで判断しようとする。
だから、最初に削るべき選択肢を正解にすることも起こる。
語彙が少ない子の場合には、
本文に書かれている言葉が使われている選択肢を選ぶことになる。
2)国語が得意な生徒の場合
その選択肢を深読みして迷うことになる。
選択肢は基本的には、そのまま受け止める必要がある。
それに対して解釈を加えないこと。これが基本。
ところが、国語が得意な生徒ほど選択肢に対してもあれこれと考え始めるのである。
そして、また、
その文脈とは関係ない箇所と関連させて考え込んだりするのである。
では、どうすれば正解を出せるのだろうか。
まず、傍線部から必要な情報を得る。そこから始める。
たとえば、ありとあらゆるデータを説明する医師もいるが、と書いてあったとします。
ここで○点、考えることができるのです。
①不足している情報の把握。
何のデータを説明するのかわからないので、それを調べます。
②わかることの把握。
「が」とあるので、そうしない医師もいることがわかります。
ありとあらゆるデータを説明する医師、という表現そのものにそうでない医師がいることが示されます。
どちらにしても、データを説明する医師とそうしない医師との違いがあることがわかるので、その差が何かを調べます。
これが基本パターンです。
正しい問いかけによって根拠をとるのです。
この選択肢はあっているのだろうか? という問いではなく、
この傍線に関係する内容は何か? という問いかけによって根拠をとるのです。
また、設問で問われている内容から正しく根拠をとっていくのです。
その上で、文脈を把握する力も要求されます。
どんな文章を読む時にも
①対比
②具体・抽象
③因果関係
この3点の関係は強く意識しなければなりません。
また、答えを出すためには、
①同じことば
②反対のことば
この2つのことばを意識することも重要になります。
本文を読む際に関係を意識しながら読み進め、
傍線・空欄の段階では、不足しているもの、わかるものを把握する。
とにかく本文に正しく根拠をとること。
これが最優先しなければならないことなのです。
あとはその根拠が書かれている選択肢を選ぶ。
これで正答率は変わります。
答えを出そうとする前に、文脈と傍線から正しく根拠をとる。
これを忘れないようにしましょう。
具体的には他のブログを参考にしてください。
今後は、入試問題の解説も増えていく予定です。
国語が得意になる文章の読み方(第7回)
前回は、虔十の初めての願い事がかなうことになった場面で終わりました。
〈本文〉
虔十はまるでよろこんですぐにまっすぐに家の方へ走りました。
そして納屋から唐鍬を持ち出してぽくりぽくりと芝を起こして杉苗を植える穴を掘りはじめました。
虔十の兄さんがあとを追って来てそれを見て言いました。
「虔十、杉ぁ植える時、※掘らなぃばわがなぃんだぢゃ。明日まで待て。おれ、苗買って来てやるがら。」
虔十はきまり悪そうに鍬を置きました。
次の日、空はよく晴れて山の雪は真っ白に光りひばりは高く高くのぼってチーチクチーチクやりました。そして虔十はまるでこらえ切れないようににこにこ笑って兄さんに教えられたように今度は北の方の境から杉苗の穴を掘りはじめました。実にまっすぐに実に間隔正しくそれを掘ったのでした。虔十の兄さんがそこへ一本ずつ苗を植えて行きました。
※掘らなぃばわがなぃんだぢゃ…杉は植えるときに掘らないとだめだ、ということ。杉が湿度の高い土を好むことからとのこと。
「まっすぐに家の方へ走りました」
まっすぐに家へ帰ったという表現があれば、ふつうは寄り道をしないで帰ったということを示します。今回は、文字どおり「まっすぐに」走っていったことがうかがえますが、要するに一刻も早く家に行こうとしたというのがわかります。
では、なぜそんなことをしたのでしょうか。
次の文を読むとわかりますね。杉苗を植える穴を掘りたかったからです。ここに虔十の喜びが表れています。
ところで、虔十が一目散で帰っていったあとの3人の身になってみましょう。
杉苗を買ってやることになったところで、虔十はいきなり家の方へ向かって走り去ったのです。
これはどうしたことだ? と思いますよね。
だから、お兄さんが「あとを追って来」たのです。
そこで虔十が杉苗を植える穴を掘っているのを見て、杉苗は植える時に穴を掘らないとだめなんだと注意しました。自分のそそっかしさに「きまり悪そうに」した虔十でした。
きまり悪い、
という言葉ですが、これは入試にもよく出題されます。
意味は、「人前でちょっとした失敗をしでかすなどして、内心恥じ入る様子だ」(今回は『新明解国語辞典』からの引用です。
そして「次の日」になります。
この情景描写をみなさんはどう読みますか?
冒頭の情景描写については動画で説明していますので、そちらを見てもらえたらと思います。
情景描写の読解って実は非常に簡単です。
情景描写のはたらきと解法を知っていれば容易に解けます。
【はたらき】内容暗示、心情暗示
【解法】書かれてあるもののイメージ+文脈判断
「次の日、空はよく晴れて山の雪は真っ白に光りひばりは高く高くのぼってチーチクチーチクやりました。そして虔十はまるでこらえ切れないようににこにこ笑って兄さんに教えられたように今度は北の方の境から杉苗の穴を掘りはじめました。」
では、丁寧に確認していきます。
「次の日」は、虔十が杉苗を買ってもらえることになった日の翌日であり、お兄さんに「明日まで待て。おれ、苗買って来てやるがら。」と言われた、その「明日」にあたる日です。すなわち、虔十の願いであった杉苗を植えることができる日なのです。
「空はよく晴れて」
「山の雪は真っ白に光り」
「ひばりは高く高くのぼってチーチクチーチクやりました」
いかがですか。いかにも明るく楽しそうな感じが伝わりますよね。
「そして虔十はまるでこらえ切れないようににこにこ笑って」
さきほどまでのいかにも楽しそうな雰囲気の描写に続いて、幸せいっぱいの虔十が描かれます。虔十の幸せいっぱいの心情を表現していたのが、この情景描写だったのです。
しかも、空、山、雪、ひばりと虔十の好きな自然の風物が描かれているのです。
さらには、
空
山
ひばりは高く高くのぼり
虔十
というように、高いところから低いところへ、広い視野から狭い視野へ、という変化まであるのです。
虔十の喜びにスポットライトがあたるかのような演出ですね。
ちなみに今の読解を生むための問いかけは、なぜ、空、山、ひばりの順番で書いたのだろう、です。とにかく他の可能性と比べるということが大切です。
実にまっすぐに実に間隔正しくそれを掘ったのでした。虔十の兄さんがそこへ一本ずつ苗を植えて行きました。
「実にまっすぐに実に間隔正しく」という表現から虔十の几帳面さがうかがえます。また、杉苗を大切にする思いにもあふれています。さらには、重要な伏線にもなっているのです。
細部へのこだわりを持つことが、読解力をつける近道になります。
丁寧に丁寧に読むことを習慣にしましょう。
そうすれば、今まではとらえることのできなかった情報に気づけるようになります。
そうなったらあとは仕上げです。
問題を時間内に解くための読み方に変えていきます。
すなわち、問いかけはするけれど、その段階で答えは考えずに読み進める。
読み進めるうちに答えが出てきたものだけを拾い上げる。
これで相当な高得点をとることができます。
「虔十公園林」が終わったら、時間内に問題を解くための文章の読み方をお伝えします。